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マイコンが様々な分野で使用されることになったのは、小型である、必要な性能を備えている、安いという理由からです。これは半導体の高性能化、高集積化、低価格化の恩恵を得ているところであるといえるでしょう。
世界で初めて開発されたコンピュータ、1946年ペンシルバニア大学で生まれたENIACであると言われています(写真 3?3)。真空管(電球のような外観で、トランジスタと似た機能があります。大きく、熱く、現在では一部のオーディオマニア以外は使用していません)を18000本使用して、総重量はなんと30トンもありました。能力としては、符号付き10桁の演算が可能で、毎秒5000回の加算、14回の乗算が行えました。そのため炊飯器を制御したり、電卓を作ったりするぐらいの能力はあったはずです。しかし、こんなばかでかいコンピュータを使用して炊飯器を作るというのはナンセンスですよね。
写真 3?3 Eniacの真空管を交換しているところ
***eniac3***
cU.S. Army Photo
その後、1971年に、Intelがi4040というCPUを開発しました。これは電卓を作るために開発されたCPUで、マイコンの先駆け的な製品です。i4040の処理能力は4ビット、500KHz(毎秒5億回)でした。今から30年以上前に開発されたマイコンで、切手ぐらいの大きさしかありませんが、ENIACの処理能力を大きく超えています。この頃から、マイコンの高性能化・小型が加速度的に進んでいきます。
その後の高性能化の歴史は、国内での例でいくと、パソコンやゲーム機を考えてみるとわかりやすいでしょう。
筆者が本格的にプログラミングを覚えたパソコンは、1985年に発売されたPC-8801mk2SR(NEC製)というパソコンで、当時の販売価格で30万円弱でした。その4年後、任天堂から初代ゲームボーイが発売されます。初代ゲームボーイに搭載されていたCPUは、PC-8801mk2SRと同じものであり、計算能力だけでいえば同じだけの能力を備えていました。しかし初代ゲームボーイの定価はたったの12,800円です。初代ゲームボーイの価格がもしPC-8801mk2SRと同じく30万円もしていれば、1億台ものセールスを記録することはなかったでしょう。このときPC用CPUがわずか数年で、組み込み機器に導入可能になったといえます。
その後、32ビットCPU搭載パソコンとしてPC-9801RA2が発売されたのは1988年7月のことです。ハードディスクを内蔵していないモデルでも当時の価格で50万円しました。ここから13年の月日がたちますが、2001年3月に32ビットCPU(ARM7TDMI)を内蔵するゲームボーイアドバンスが任天堂から発売されます。ゲームボーイアドバンスの定価は8,800円です。PC-9801RA2とゲームボーイアドバンスに搭載されていたCPUは全く同じものではありませんが、32ビット16MHzという点では同じです。そしてこの約3年半後の4倍の性能(66MHz動作)を持つニンテンドーDSが発売されています。
このとおり高性能なPC用CPUに、安価なマイコンの性能がどんどん追いついていっています。今のPC用CPUと同じだけの処理能力を有するCPUを組み込み分野に適用することは困難です。しかし今後、小型化と低価格化が進めば、ゲーム機のこれまでの進化の例よろしく、組み込み分野に現在のPCレベルのCPUが組み込まれていくことになるでしょう。
コラム3?1最新の組み込みチップ
本文中では「これから」という話を書きましたが、実際には、次の世代交代も目の前まできています。英国ARMが開発したCortex-A8という組み込み用プロセッサコアはクロック数800MHzと、現在のノートパソコンに近い性能を有しています。小型低価格で、現在このコアを使用した携帯用ゲーム機の開発が進んでいるようです。一般用のゲーム機として世代交代が進むことはそう遠いことではないでしょう。 |
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