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コラム19?1オーディオアンプ
DACでバッファを無効にした場合はもちろん、バッファを有効にした場合でも、DAC回路は、ヘッドホンやスピーカーを鳴らすことができません。ヘッドホンやスピーカを鳴らすために必要な電力を供給することができないからです。TIMのPWMを使って音声再生しようとする場合でも、GPIOの出力電流の制限がありますので、直接ヘッドホンやスピーカーを鳴らすのには無理があるでしょう。 そこで音声を大きな音量で再生したい場合にはオーディオアンプを接続する必要があります。 実際に接続するに際してはいろいろな方法がありますが、手軽な方法としては、PC用のスピーカーを接続することです。PC用のスピーカーは、音質さえ気にしなければ非常に安価に手に入ります。接続は3.5mmのステレオミニピンジャックがほとんどですが、ブレッドボードに接続するためのハーネスを製作するのも簡単です。ピンプラグのタブには図 19?1に従って半田付けします。 図 19?1 ステレオピンプラグへの接続方法 ***P6291469.jpg***
***端子から線を引き出してR/L/GNDがわかるようにする こんな感じで***
音質を重視したい場合には、乱暴ないい方ですが、より大きくてより重いスピーカーを選んでください。大きい、重いものほど音質がよい傾向にあります。 音質や音源の忠実な再現をしたい場合には、いわゆるパワードスピーカーを利用するのがよいでしょう。PAやスタジオ用のモニタースピーカー用途として売られているものは、音源を忠実に再現することを目的に開発されています。そのため音源の性質を確かめたいという用途にぴったりです。PC用スピーカーに比べれば多少値段が張ることと、サイズが大きいものが多いことが難点です。 ヘッドホンでしか聴かないという方であれば、ヘッドホンアンプでも用が足りるでしょう。ただヘッドホンアンプはオーディオマニア向けの高性能なものが多く高価な場合が多いので気をつけてください。 電子工作の初心者の方に一番お勧めしたい方法は、各社から発売されているアンプキットを利用することです。汎用性のあるアンプが安価に入手できる一方で、半田付けや配線等の電子工作の格好の練習素材になります。 |
コラム19?2アンプキットいろいろ
現在、数多くのオーディオアンプキットが市販されており、電子部品店の店頭や通信販売で入手可能です。お勧めしておいて自分で試さないというのもどうかと思いましたので、筆者でのいくつか購入して試してみました。以下紹介しますので、利用するキットの選定に際して参考にしてみてください。 キットを選定する際にまず見るべき部分はどんなオーディオアンプICを使用しているかです。昔はトランジスタをいくつも組み合わせたアンプキットがありました。もっとも現在は、高性能なオーディオアンプがIC化されたものが安価に手に入りますので、アンプキットもすべからくICを使用しています。そのアンプキットの性能や仕様というのはすなわち使用されているアンプICの性能・仕様ということになります。 キット・ICの仕様でまず着目したいのが電源電圧です。マイコンを使って製作をしているときには、マイコンボードの動作用に電源を用意しているはずです。USBの5Vであったり、マイコンボード上のレギュレタが用意する3.3Vだったりするでしょう。この電源電圧で動作するのであれば、別途電源を用意する必要がありませんから、実装が楽になります。 アンプの仕様を見るときにはつい出力に目が行きがちですが、マイコンボードの出力のモニター用であれば1W以下でも十分に音として認識できます。そのため出力は、スピーカーをがんがん鳴らしたいということでなければ、余り気にしない方がよいでしょう。 そして使用されているICが、そのキットとしてでなくても、単品で店頭や通販で入手可能かも確認しておいてください。プリント基板を起こして製作するような場合には、ICを直接実装することになります。いわゆる定番ICと呼ばれるものを使用するのが、この意味では安全です。 あとは細かいところでは、モノラルかステレオか、基板上の入出力端子の形状(ヘッダピンかヘッドホンジャック実装か)、基板上にボリュームが実装されているかを確認して、自身のニーズに合うかを確認するとよいでしょう。 後述するキットにはいわゆる「D級アンプ」が含まれています。D級アンプは、PWM方式を利用したアンプでエネルギーの変換効率が高いです。熱損失が少なく、マイコンとの親和性が高いといえます。ただその特性上周囲に放射するノイズが大きいです。筆者が試した環境では、FMラジオが受信不可能になったのと、2.4GHz帯を利用しているワイヤレスマウスが利用不能になりました。D級アンプを使用するときには、周囲の電波環境に与える影響が許容範囲内か、よく検討した方がよいでしょう。 ・エレキット(イーケイジャパン)「ベビーアンプ(PS-3238)」(写真 19?1) ステレオパワーアンプIC:NJM2073Dを使用したパワーアンプキットです。1.8Vから15Vまでの電源電圧で使用でき、最大出力は500mWです(ステレオ・電源6V・負荷4Ω時)。基板上にボリュームが実装されているので、基板の入力をマイコン側の出力に直接接続しても音量調整ができます。 写真 19?1 エレキット(イーケイジャパン): ベビーアンプ(PS-3238) ***P3041187***
・エレキット(イーケイジャパン)「1Wパワーアンプ(PU-2101)」(写真 19?2) モノラルパワーアンプIC:TDA7052を使用したパワーアンプです。半完成品として販売されています。3Vから12Vまでの電源電圧で使用でき、最大出力は1Wです(電源6V・負荷8Ω時)。基板上にボリュームが実装されているので、基板の入力をマイコン側の出力に直接接続しても音量調整ができます。 写真 19?2 エレキット(イーケイジャパン):1Wパワーアンプ(PU-2101) ***P3041187***
・ワンダーキット(共立電子)「386メインアンプキット」(写真 19?3) 定番パワーアンプIC:LM386を使用したパワーアンプです。4Vから12Vまでの電源電圧で使用でき、最大出力は325mWです(電源6V・負荷8Ω時)。LM386は互換品も発売されており(NJM386等)、店頭入手も容易なICです。 写真 19?3 デジット(共立電子): 386メインアンプキット ***P3041190***
・デジット(共立電子)「2W+2Wステレオアンプ」(写真 19?4) D級パワーアンプIC:PAM8202を使用したパワーアンプです。2.5Vから5.5Vまでの電源電圧で使用でき、最大出力は2Wです(ステレオ・電源5V・負荷4Ω時)。D級アンプであり、高効率です。 写真 19?4 デジット(共立電子):2W+2Wステレオアンプ ***P3041182***
・デジット(共立電子)「LM4881ヘッドホンアンプ」(写真 19?5) ヘッドホンアンプIC:LM4881を使用したパワーアンプです。3Vから5Vまでの電源電圧で使用でき、最大出力は85mWです(ステレオ・電源5V・負荷32Ω時)。出力が小さいように見えますが、ヘッドホンで聞く分には十分な出力です。レギュレタICの使用を選択できるようになっており、ICの電源電圧範囲よりも広い電圧に対応できるようになっています。 写真 19?5 デジット(共立電子): LM4881ヘッドホンアンプ ***P3041183***
・マルツパーツ館「ステレオ・ヘッドホンアンプ キット」(写真 19?6) ヘッドホンアンプIC:LM4881を使用したパワーアンプです。3Vから5Vまでの電源電圧で使用でき、最大出力は85mWです(ステレオ・電源5V・負荷32Ω時)。出力が小さいように見えますが、ヘッドホンで聞く分には十分な出力です。基板上にヘッドホンジャック・ボリュームが実装されているので実験時には便利です。 写真 19?6 マルツパーツ館:ステレオ・ヘッドホンアンプ キット ***P3041191***
・秋月電子「ポータブルヘッドフォンアンプキット」(写真 19?7) オペアンプIC:OPA2353を使用したパワーアンプです。±2.2Vから±3Vまでの電源電圧(両電源)で使用でき、最大出力は200mW程度でしょう(ICの仕様値からの推定・電源5Vで定格出力電流の40mAを流したとして)。アンプICがオペアンプなので、入力抵抗が大きく、出力インピーダンスが大きい機器にも直接接続できます。もっとも両電源なので電源の用意には工夫が必要です。 写真 19?7秋月電子:ポータブルヘッドフォンアンプキット ***P3041140***
・秋月電子「1W×2ステレオ・デジタル・オーディオアンプ・キット」(写真 19?8) D級アンプIC:TPA2001D1を使用したパワーアンプです。2.7Vから5.5Vまでの電源電圧で使用でき、最大出力は1Wです (ステレオ・電源5V・負荷8Ω時)。D級アンプであり、高効率です。 写真 19?8秋月電子: 1W×2ステレオ・デジタル・オーディオアンプ・キット ***P3041184***
・ストロベリーリナックス「MAX9704(10W+10W) D級ステレオ・オーディオアンプキット」(写真 19?9) D級アンプIC:MAX9703を使用したパワーアンプです。電源電圧が10Vから24Vまでであり、マイコンの電源との共用は難しいのですが、非常にコンパクトながら(コンパクトフラッシュサイズ)10Wの最大出力があります (ステレオ・電源13V・負荷8Ω時)。D級アンプであり、高効率です。この出力クラスのステレオアンプとしては価格も安価です。 写真 19?9 ストロベリーリナックス:MAX9704(10W+10W) D級ステレオ・オーディオアンプキット ***P3041186***
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コラム19?3モニター用スピーカー
コラム19?2で紹介したアンプキットを使用する場合で、ヘッドホンを使用しない場合にはスピーカーが必要です。 電子部品店で売られている電子工作用スピーカーを、アンプの出力に接続しさえすれば、とりあえず音は鳴ります。もっともこのタイプのスピーカーはそのままではまともな音が鳴りません。俗に言う「スカスカ」な音になってしまうのです。 その原因はスピーカーの構造にあります。スピーカーは、振動板の前面から空気の振動として音を出しますが、同時に、振動板の裏面からも後方に向けて音が出ます。前面から放出された音と、裏面から放出された音は位相が逆なので、この2つの音がぶつかり合うと、互いに打ち消し合ってしまいます。この打ち消しあう効果は低音ほど大きくなります。つまり低音の音量が小さくなってしまうということです。 市販されているスピーカーがどれも箱(エンクロージャー)に入っているのはこれが理由です。スピーカーの裏面を箱で囲ってしまい、音が外に漏れないようにすると、前面から出た音が打ち消されなくなります。結果、本来出したかった音が出るということです。 電子工作用スピーカーでも原理は同じで、これだけ小さなスピーカーでも、兎に角入れ物に入れるだけで音が格段に変わります。写真 19?10は筆者が試しにスピーカーを事務用のインサートカップに入れてみたものです。美しくないのですが、隙間が開かないようにセロテープをべたべたと貼っています。これだけでも裸のスピーカーとの音の違いを感じることができました。 写真 19?10 コップ入りスピーカー ***P3041248***
手元に余っていた段ボール箱でも試してみました(写真 19?11)。容量が大きい分、こちらはさらに音がよくなりました。 写真 19?11 段ボール箱入りスピーカー ***P3041246***
市販のスピーカーを買ってくれば話は早いのですが、自作にこだわりたい方は、共立電子からスピーカーボックスのキットが発売されていますのでこれを利用してみてもよいでしょう。簡易な紙製のもの(写真 19?12)と木製のものがあります。紙製の方は、紙箱でこれぐらい変わるのかと感じられるはずですし、木製の方は、本格的な市販スピーカーにも負けていません。 写真 19?12 ボール紙スピーカー ***P3041250***
写真 19?13 MDF板スピーカー ***P3041245***
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