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13.4.6. プルダウン・プルアップ

 前項では抵抗を利用して任意の電圧を作り出しました。次にスイッチを使って、デジタル的な電圧の変化を作り出してみましょう。

 スイッチを使って電圧を上げ下げするというときには、次のような回路を思いつくのではないかと思います。

13?21回路図

 スイッチを入れると電圧が電圧計にかかり、切ると電圧が下がります。しかしこの回路には問題があります。スイッチを入れたときの電圧は確かに電源電圧と同じになります。しかしスイッチを切ったときはどうでしょう。

写真 13?48 スイッチオフ時の電圧 0Vになるときもあるが常時変動している

***P3071326***

 電圧が0Vになるときもあれば、プラスになったり、マイナスになったりと常に変動します。これは電圧計のプラス側からスイッチまでの配線が、空気中の電波を受信したり、隣接する配線からの電磁誘導をうけたりして、電圧として感じ取っているからです。このような微少な電力ではLEDやモータなどの負荷を駆動することはできません。しかしマイコンの入力は、わずかな電力の入力でも電圧の変化をよみとることができ、こういった電圧の変化を読み取って、場合によっては、スイッチが接続されていない状態でも、Hレベルになったと判断してしまうことがあります。最近は携帯電話や無線LANなど電波を発生する機器がたくさんありますから、いつ入力のレベルを誤解するかわかりません。そのためスイッチを切っているときには、電圧を確実に0Vか、少なくともマイコンが入力を誤解しない電圧にできる回路としなければいけません。

 一番簡単な方法は、数のように、2接点スイッチを使うことです。

13?22回路図

 ただタクトスイッチのように2接点でないスイッチも多いですし、2接点のスイッチでもスイッチの一を変化させる途中はどこにも繋がっていない状態になりますから(ノンショーティングタイプスイッチの場合)、問題を完全に解決したことにはなりません。

 そこでこういった場合には、プルアップ抵抗、プルダウン抵抗を利用します。以下の様な回路を組んでみます。

13?23回路図

 回路図中のスイッチがオフになっているとき、電圧計は抵抗を介して電源に繋がっています。電圧計の両方の端子の間は数十から数百メガオーム単位の高い抵抗値を持っています。そのため抵抗分圧の法則により、電圧計にはほぼ電源電圧に近い電圧が、安定的に加わります。一方、スイッチがオンになると、電圧計のプラス側が電源のマイナス側に直接繋がります。電圧計の両端が同じ電位を測定していますから、電位の差はなく、計測される電圧は安定的に0Vになります。スイッチをオンにしたときに、電圧計に表示される電圧が0Vで安定していることを確かめて下さい。スイッチをオンにしたときには抵抗を介して電源のプラスからマイナスに電流が流れることになりますが、抵抗値が大きいので、ほとんど電力を消費しません。スイッチがオフの時に電圧が高くなるということで、論理が逆にはなってしまいましたが、スイッチの状態を確実に電圧として反映できるようになりました。

 この抵抗は回路の中の一定の場所の電位を引き上げる働きを持っています。そこでプルアップ(pull-up)抵抗と呼ばれているわけです。

 さて電圧を安定させる抵抗の使い方としては、先ほどとは逆に、下図のような繋ぎ方もできます

13?24回路図

 この回路の場合、スイッチがオフの間は電圧計のプラス側は抵抗を介してマイナスに繋がっています。抵抗を介して繋がっていますが、同じ部分、つまり0Vの電圧はいくら分圧されても0Vです。そのためスイッチがオフの間は、電圧は安定的に0Vになります。一方スイッチがオンになると、電圧計のプラス側は電源のプラスに直接接続されますから、電源の電圧がそのまま電圧計にかかり、安定的に電源電圧が測定されます。

 この抵抗は回路の中の一定の場所の電位を引き下げる働きを持っています。そこでプルダウン(pull-down)抵抗と呼ばれています。

ちなみにマイコンの入力ピンもテスターと同じく、GNDとの間で大きな抵抗を持っているため、プルアップ抵抗やプルダウン抵抗を使用すると、入力ピンに加わる電圧を安定させることができます。

ここからわかるとおり、「プルアップ抵抗」「プルダウン抵抗」という名前の特殊な抵抗が売られているということではなく、プルアップやプルダウンに使っている通常の抵抗のことをプルアップ抵抗・プルダウン抵抗と読んでいます。


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