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13.4.5. 抵抗分圧

 次に、抵抗分圧を理解するための実験をしましょう。抵抗分圧はマイコン固有のテーマではありませんが、各所で頻出しますので概念を理解しておく必要があります。

 抵抗分圧とは、電源のプラスとマイナスの間に、複数の抵抗が直列に接続されている場合に、各抵抗の両端の電圧は、電源電圧全体を、各抵抗の値の比率で割り振ったものになるという現象です。全体の電圧を各部品に振り分けているので、「分圧」というわけです。抵抗分圧での「抵抗」は、いわゆる電子部品の抵抗器ということではなく、電流の流れに対して抵抗として働くものすべてが該当します。モーターや電球を直列に複数接続する場合でも、抵抗分圧がおきます。

13?13回路図

 具体例でいうと、上記のように、5Vの電源に、1kΩの抵抗を3本直列に接続した場合には、各抵抗の両端の電圧は1.67Vとなります。この数値は、

という計算で導くことができます。

 この数値は、オームの法則

電圧(V)=電流(A)×抵抗(Ω)

を利用して計算することもできます。

 電源から流れ出る電流は、

5V÷(1000Ω+1000Ω+1000Ω)=1.67mA

となりますから、各抵抗の電圧は、

0.00167A×1000Ω=1.67V

となります。ちなみに電圧はそれぞれの抵抗値の比で計算されるわけですから、1Ωの抵抗3本でも上記と同じ電圧となります。しかし合計3Ω(1Ωの抵抗3つを直列にした抵抗値)の抵抗を5Vの電源につなぐと1.67Aもの電流が流れてしまいます。そこで、大きい抵抗値の抵抗を使用しています。

13?14回路図

 この例であれば、各抵抗の両端の電圧は、

抵抗A

抵抗B

抵抗C

となります。

 このように複数の抵抗を利用することで、電源の電圧から任意の電圧を作り出すことができるわけです。マイコンのADCのように、電圧を計測するデバイスに接続すれば、このようにして作り出した電圧を計測させることができます。

 なお、抵抗分圧で作り出された電圧を利用する場合には、負荷になる部分の内部抵抗が抵抗分圧に使用している抵抗よりも大幅に大きいことが必要です。というのも、抵抗値が低いと、抵抗が並列接続されたのと同じ状態になり、抵抗分圧に使用した抵抗の抵抗値が変わるのと同じことになってしまうからです。ちなみにマイコンのADCポートは内部抵抗が大きいので問題ありません。

 では早速ブレッドボードを使って実験してみましょう。回路が組めたら、回路図を参考にして、テスターを使って各抵抗の両端や、2本の抵抗の両端の電圧を計測してみましょう。

写真 13?43 ブレッドボード上で抵抗分圧した状態 この写真では電源は約3V 抵抗はいずれも1kΩ

***P3071323***

 次に可変抵抗(ボリューム)を使って連続的に抵抗値を変化させてみましょう。ちなみに一般的な可変抵抗は写真のようなものですが、ブレッドボード上で使用する場合には基板実装用の半固定抵抗の方が便利です。

写真 13?44 可変抵抗

***P2200756***

写真 13?45 半固定抵抗 昔は摺動子が剥き出しのものが多かったが最近はパッケージに収められているものがほとんど

***P2200753***

 可変抵抗は、長い抵抗材の両端に端子を固定し、この抵抗材の任意の場所に設定をさらに別の接点を付けられるようにしたものですこの接点は、一方の端子からもう一方の端子まで動かすことができます。

13?15可変抵抗の構造

13?16可変抵抗の記号

 抵抗材全体の抵抗値は一定ですので、①と③との間の抵抗値はいつでも一定です。一方②の接点の場所は可変ですので、①と②との間の抵抗値、②と③との間の抵抗値は接点の場所比によって変化します。200Ωの可変抵抗だと、接点が真ん中にあれば、①②間の抵抗値、②③間の抵抗値はいずれも100Ωとなります。真ん中と①とのさらに半分の位置にあれば、①②の抵抗値は50Ω、②③の抵抗値は150Ωになります。接点が①の端子に接触していれば、①②の抵抗値は0Ω、②③の抵抗値は200Ωになるというわけです。

 なおこれはBカーブの可変抵抗の場合です。可変抵抗には軸の回転と抵抗値が直線的に変化するBカーブと、変化がカーブしているAカーブのものがあります。オーディオのボリュームにはAカーブをよく使用します。ちなみに半固定抵抗は通常Bカーブです。

13?17 AカーブとBカーブの違い

 可変抵抗はこのように端子が3つあることから、簡単に抵抗分圧に利用できます。

13?18回路図

 可変抵抗の両端の端子①③を電源に接続し、②の接点とプラス電源、マイナス電源との間の電圧を測定します。抵抗のシャフトを回すにつれて(半固定抵抗の場合はドライバーで回してください)、電圧が変化するのが確認できるはずです。

写真 13?46 半固定抵抗を使用した抵抗分圧の実験

***P3071324***

 また可変抵抗を用いて抵抗分圧する場合、以下の回路図のような接続も可能です。

13?19回路図

 このときの可変抵抗の②③間の電圧は、抵抗分圧の計算式を適用すると、②③間の抵抗値をRとすれば、

という計算で求められます。出力される電圧は以下のグラフのようにカーブを描きながら変化します。

 マイコンにはセンサーを接続することがありますが、センサーの中には、センサーの検出結果を抵抗値で出力するものがあります。このようなセンサーの多くは、可変抵抗のように端子を3つ備えてはおらず、2つの端子の間の抵抗値が変化するようにできています。

写真 13?47 FSR圧力センサ 丸い部分に力を加えると端子間の抵抗が変化する

***P2200735***

 この抵抗の値の変化をマイコンで読み取ろうとすると、ADCを利用しますので、抵抗分圧を行って電圧に変化させる必要があります。このときにはセンサーの端子が2つしかありませんから、下図のように接続するわけです。

13?20回路図

ブックガイド 6 電気回路・電子回路

伊藤尚未;『ゼロから理解する世界一簡単な抵抗・コンデンサー・コイルのきほん』,誠文堂新光社,200811月.

伊藤尚未;『ゼロから理解する世界一簡単なLEDのきほん』,誠文堂新光社,200811月.

後述の「トランジスタの基本」と同じく、本当にわかりやすい、抵抗やLEDの解説書です。初めて電気回路に触れる方はこれらの本から読み始めると、落ち込む結果になりにくいのでよいと思います。

 

大熊康弘;『はじめての電気回路』,技術評論社,20001月.

電気回路・電子回路の本で「やさしい」「入門」「初めて」と銘打っている本はたくさんあるのですが、本当にわかりやすい本はなかなか少ないと思います。この本はそんな中でも、数式も少なくて、比較的取り組みやすいでしょう。筆者の印象としては、高専の先生が書いた本はわかりやすいものが多いと思います。

ちなみに「電気」回路の解説書は、電気の基本的性質から解説しているもので、「電子」回路の解説書は、半導体の性質等を解説しているものです。初めての人は、「電気」回路入門から手に取るようにしましょう。

 

木村誠聡;『回路シミュレータでスッキリわかる!アナログ電子回路のキホンのキホン』,秀和システム,20089月.

アナログ系の電子回路(半導体を使っていない回路)を解説している書籍です。「回路シミュレータで」とありますか、解説がわかりやすいので、回路シミュレータを使わなくても理解が進みます。

 

米田聡;『図解&シム 電子回路の基礎のキソ』,ソフトバンククリエイティブ,20075月.

抵抗やコンデンサから始まって、トランジスタ、FET、オペアンプの使い方までのわかりやすく解説した書籍です。この本も「回路シミュレータで」とありますが、シミュレータを使わなくてもよく理解できるように書かれています。

 

小峯龍男他;『電子回路シミュレータTINA7(日本語・Book版Ⅱ)で見てわかる 電子回路のしくみと基本』,技術評論社,200711月.

『図解&シム 電子回路の基礎のキソ』と同じくシミュレータで実験しながら電子回路の仕組みを学ぶという書籍です。それぞれの部品の解説は薄めなのですが、その分いろいろな構成部品のことが解説されています。

 

Stan Gibilisco;『独習電気/電子工学』,翔泳社,20078月.

国内ではあまり見かけない切り口の電気・電子の解説書です。分子とは、電子とはというところから始まって、通常の電気回路・電子回路の解説の後、インターネットとはというところまで解説されています。解説は簡潔なのですが、複雑な数式を使わずに説明されているのでわかりやすいです。本の装丁と題名からすると堅そうな本に見えますが、実は大分と砕けた本です。

 

横田一弘;『完全マスター! 電子回路ドリル』,アットマークアイティ

http://monoist.atmarkit.co.jp/fembedded/index/eledrill.html

抵抗の使い方、LEDの点灯方法、トランジスタによる増幅回路等をわかりやすくドリル形式で解説しています。

 

小島昇;『逆引き電子回路図集』,秀和システム,20105月.

電源回路や増幅回路などの回路図を紹介しています。「回路図集」と銘打っていますが、解説が詳しくてわかりやすいので、電子回路の教科書を読んだ後に、実践的に回路の作り方を学ぶために読むとよいでしょう。


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