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13.4.4. トランジスタの利用

 トランジスタは、ざっくりと言えば電子式のスイッチです。ポイントは、小さい電流を流すだけで、大きい電流が流れる回路のオン・オフを行うことができるという点です。論より証拠ということで、早速回路を組んで確かめてみましょう。

13?9回路図

写真 13?39 トランジスタでLEDを駆動する回路を実装した状態

***P3071317***

13?10回路図

 トランジスタは本体から出ている各端子の役割が異なっており、それぞれベース(B)、コレクタ(C)、エミッタと呼びます(E)。トランジスタの丸くなっている側から見て、左からBCEとならんでいる製品が多いです。もっとも製品毎に違っているケースが多いので、都度データシートで確認した方がよいでしょう。

13?11 トランジスタのピン配列 足の側から見た状態

 スイッチをオン・オフすると、やはりLEDが点灯・消灯するのが確認できます。ここで一つ疑問が生じます。スイッチのオン・オフでLEDをコントロールするのであれば、先ほどのトランジスタを利用しない回路でもできたのだから、わざわざトランジスタを利用する必要など無いのではという点です。そこでトランジスタを利用したメリットを確かめるために、スイッチと直列に電流計を接続してみましょう。

13?12回路図

 スイッチをオンにしたときの電流値はわずか約5mAでした。つまりスイッチの中を流れている電流は5mAだけということです。しかしLEDの明るさは変わっていません。プラス電源と抵抗の間、エミッタとマイナス電源との間に電流計を挿入してみましょう。

写真 13?40 ベースに流れ込む電流

***P3071318***

写真 13?41 コレクタに流れ込む電流

***P3071319***

写真 13?42 エミッタから流れ出る電流

***P3071320***

 値を見てみると、スイッチを経由してトランジスタのベースに流れ込んでいる電流(これをベース電流と呼びます)があるときには、抵抗とLEDを経由してトランジスタのコレクタに電流(これをコレクタ電流と呼びます)が流れ込んでいます。そしてエミッタからマイナス電源に流れ出ている電流(これをエミッタ電流と呼びます)は、ベース電流にコレクタ電流を加えたものとなっています。

 つまりスイッチには少量の電流を流すだけで、駆動したい部品には大きな電流を流すことができるということになります。このことにどのようなメリットがあるのでしょうか。

 マイコンには電子式のスイッチ(実際にはFETという半導体)がたくさん内蔵されているのですが、マイコン内部の電子回路が極々微細な半導体で構成されているため、大きな電流を流すことができません。STM32であれば、内蔵されたスイッチを利用してプラス側から流すことのできる電流は8mAだけです。これ以上の電流を流してしまうと、マイコンを破壊してしまいます。これではLED1灯を中程度の明るさで光らせることはできても、3灯はもちろんのこと、1灯を最大限の明るさで光らせることもできません。そこでマイコンの先にトランジスタを接続すれば、マイコン内部のスイッチにはわずかな電流を流すだけで、トランジスタの先に接続されているLEDには大きな電流を流すことができ、明るく光らせることができるのです。

 さてここでトランジスタを活用しようという場合には、ベースに接続する抵抗値が問題になります。本来は色々とややこしい計算が必要なのですが、単にスイッチとして使うだけであれば、とりあえずは、

流したいコレクタ電流÷使用するトランジスタのhfe(電流増幅率)×1.5?2.0

の電流を流すことになる抵抗を選定しておけば問題ないでしょう。

ブックガイド 5 トランジスタの使い方

伊藤尚未;『ゼロから理解する世界一簡単なトランジスタのきほん』,誠文堂新光社,20089月.

この業界では「わかりやすい」と銘打った本で本当にわかりやすいものに出会ったことが無いのですが、この本は本当にわかりやすいです。情報量は少ないので、本当に初めてトランジスタに触れる人向きです。

 

中山昇;『ダイオード&トランジスタがわかる本』,CQ出版,2009年2月.

『ゼロから理解する世界一簡単なトランジスタのきほん』の次に読むとよいでしょう。ダイオード、トランジスタ、FETの基本的な利用方法がわかりやすく解説されています。

 

関博隆他;『ディスクリート半導体素子の基礎から応用のすべて改訂新版ダイオード/トランジスタ/FET活用入門』,CQ出版,200410月.

本格入門のための入門書といった感じの本です。先の2冊を読んだ後だと、この本も理解できると思います。

 

丹波山次郎;『トランジスタ活用はじめの一歩』,CQ出版,20087月.

ちょっと難しめの記述があるので初めて読むには向かないように思うのですが、実用的な活用例も紹介されているので、知識の確認・補充用によいと思います。

 

鈴木雅臣;『定本トランジスタ回路の設計』,CQ出版社,199112月.

本格的にトランジスタの利用方法を習得したい場合に挑戦してみましょう。前各著に比べると大分とレベルが上がります。


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