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1.2. 商用開発環境

 このような開発環境としては、商用の高機能なものが数多く提供されています。例としては、STMicroelectronicsの下記サイトをご覧ください。

http://www.st-japan.co.jp/mcu/stm32_tools.html

商用の開発環境では、開発環境の各種のツールが一括、そして、事実上設定済みで提供されています。開発対象となるマイコンボードや接続のためのインターフェースも付属しています。またエディタ、コンパイラなどの各種ツールを単一のソフトウェア上で利用できる統合開発環境(Integrated Developing Environment: IDE)として提供されているものがほとんどです。商用の開発環境を利用すると、簡単にマイコン開発をスタートさせることができます。

しかし商用開発環境には「値段が高い」というデメリットがあります。パソコンまで含めたハードウェア環境よりも高額な場合もあり、学生やホビイスト(趣味で開発をする個人)向きではありません。多くの商用開発環境ではフリー(無料)版も提供されていますが、開発できるプログラムコードサイズに制限があり、特にCortex-M3のような高機能なプロセッサからすると、メモリの一部しか使用できないことになってしまいます。

そこで本書では、次項で述べるとおり、無料で利用できるオープンソースツールを利用して開発を行います。

コラム1?1商用開発環境の利用について

 筆者としては商用開発環境を利用した開発の意義を否定するものではありません。

 商用開発環境は対象マイコン向けに最適化され、各種ツールが一括して提供されています。また電話やメールでのサポート(質問をすれば回答を得られる)を得ることも可能なことが多いです。そのため商用開発環境を利用すると、オープンソースツールを利用する場合よりも、開発期間を短縮できる可能性が高くなります。特にマイコン開発では、PC向けの開発とは異なり、情報が圧倒的に少ないものですから、商用開発環境自体が内蔵し、または商用開発環境を利用することにより提供される各種の情報は大変貴重なものです。さらにコンパイラの性能も高いことが多く、コードサイズが削減できたり、実行速度が上げられることもあります。

 企業が開発を行うのは商業的利益を拡大させるためであり、利益とは収入から費用を差し引いたものです。仮に、商用開発環境を利用することにより、オープンソースツールを利用した場合よりも10日早く製品をリリースできれば、1日分の販売利益が10万円とすれば、100万円の利益拡大が見込めます。また開発チームが5人であれば人月単価60万円とすると、開発期間10日間の短縮により、100万円の費用削減が可能ということになります。200万円あれば、商用開発環境の購入も十分可能になってくるでしょう。コードサイズが小さくなって使用するマイコンチップを安価なものにできれば、製品価格が下がり競争力が上がります。

 商用開発環境の利用者はオープンソースツールを毛嫌いし、その逆も然りといった状況があるように見受けられます。しかし要は適材適所ということで、自分・自社の開発目的と利用可能な資金・リソースから開発環境についての最適解を見つけなければいけないということだと考えています。


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