マイコン入門spacer ad
トップページに戻る(マイコン徹底入門:STM32で始めるARM/Cortex-M3組み込み開発)
「マイコン徹底入門」とは? |  「マイコン徹底入門」を読む |  ダウンロード |  掲示板 |  筆者の自己紹介


Previous: 3.2.4. フォトカプラを使用したFETの駆動

Up: 3.2.4. フォトカプラを使用したFETの駆動

Next: 3.2.4.2. フォトカプラを利用したHブリッジ


マイコン徹底入門:周辺回路編:STM32のペリフェラルを活用: 3. タイマ: 3.2. FETを利用したHブリッジ: 3.2.4. フォトカプラを使用したFETの駆動:

3.2.4.1. フォトカプラの利用方法

 フォトカプラは赤外線発光ダイオードとフォトトランジスタが一つのパッケージに封入されたものです( 8?84)

8?84 フォトカプラの回路図(構造)

 8.8.4.4でセンサとしてフォトインタラプタを紹介しましたが動作原理は全く同じです。赤外線発光ダイオードから照射された赤外線をフォトトランジスタが受光し、フォトトランジスタのコレクタからエミッタに電流が流れます。フォトインタラプタとの違いは、赤外線を物理的に遮ることができることができるかできないかの違いだけです。

 入力部分に電流を流せば出力部分で電流が流れるという機能自体は通常のトランジスタと同じです。そのためスイッチとしての機能だけに着目するのであればあえてフォトカプラを使用する意味はありません。フォトカプラを使用するのは、入力側と出力側を電気的に絶縁したいときです。たとえばDCブラシモータはブラシとコミュテータのスイッチングで大きなノイズが発生するのですが、このノイズが電源線を経由して、マイコンを誤動作させる場合があります。このときにマイコンとモータを別電源で動作させ、且つ、マイコンと駆動回路との信号のやりとりをフォトカプラを介して行えば、マイコン側とモータ側は電気的に絶縁されます。そのためモータ側のノイズはマイコンには伝わりません。

 そしてフォトインタラプタの時と同じように、コレクタ又はエミッタを抵抗を介して電源に接続すれば、入力の有無を電圧として出力することができます。出力電圧を変化させられるのであれば、FETを駆動することが可能です。

 それではフォトカプラを使用してFETを駆動する実験をしてみましょう。ここでは後々Hブリッジをつくることを想定して、4回路分のフォトカプラが内蔵されたTLP521-4(写真 8?37)を使用します。TLP521-4の入手が難しければ、1回路のTLP521-12回路のTLP521-2でも構いません。

写真 8?37 TLP521-1/TLP521-4

***P3041048***

8?85 回路図

  8?85PMOSFETを利用した回路です。フォトトランジスタ部分は、入力オフ時にPMOSFETをオフにする(ゲート電位をソース電位する)ために、コレクタ接続になっています。赤外線発光ダイオードの電源として使用する3.3Vはマイコンボードの電源出力等を利用すればよいでしょう。FET側の電源は、アルカリ電池を5本以上、ニッカド(ニッケル水素)電池を6本以上直列にしたり、006P型乾電池を使用したりしてください。

 赤外線発光ダイオードのオンオフにより、FET側に接続した負荷として発光ダイオードのオンオフが確認できるはずです。各部分の電圧を計測してみると、赤外線発光ダイオードにかかっている電圧は0V3.3Vですが、フォトトランジスタ部分の出力は0V7.2Vになっており、発光ダイオードにかかっている電圧も7.2Vになっています。つまりマイコンからの出力電圧が、絶縁されながらも、7.2Vに変換されたということです。

8?86 回路図

 NMOSFETを利用する場合には 8?86のような回路図となります。入力オフ時にNMOSFETをオフにするために、エミッタ接続になっています。P型の時と同じように、赤外線発光ダイオードのオンオフで負荷である発光ダイオードが点滅します。

コラム8?15フォトカプラを使用しない接続

 ここまで読んで「ノイズの悪影響がないのであれば普通のトランジスタでよいのでは。普通のトランジスタでよいのであれば、STM32のオープンドレインを使用してもよいのでは」と考えた方もいらっしゃるかもしれません。確かにその通りです。本項のサンプルプログラムの回路ではフォトトランジスタはオープンコレクタによる電圧変換のためだけに使用していますから、ノイズの影響を受けていないのであれば、普通のトランジスタでも対応可能です。ノイズによる影響を受けるかの検証をちゃんと行えるのであれば、トランジスタで対応するというのもありでしょう。

 またSTM32のオープンドレインでも、5Vまでであれば同じように電圧の変換ができますから、直接接続するということも不可能ではありません。ただ理屈上電圧レベルの変換が可能でも、パワーMOSFETのような高圧・大電流を流す素子をマイコンのようなデリケートなデバイスに直接接続してしまうのは、筆者としては避けておいた方が無難だと思います。現実的な話としては、トランジスタやフォトカプラが壊れても懐はそれほど傷みませんが、マイコンボードを何回も壊していると財布がすぐに空になります。


Previous: 3.2.4. フォトカプラを使用したFETの駆動

Up: 3.2.4. フォトカプラを使用したFETの駆動

Next: 3.2.4.2. フォトカプラを利用したHブリッジ


このページはITと知的財産の法律情報「法務ネット」の管理人が制作・運営しています。
_Toc266801166