3.2.4.2. フォトカプラを利用したHブリッジ

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3.2.4.2. フォトカプラを利用したHブリッジ

サンプルプログラム

tim3_pwm_h_bridge_100hz

8?87 回路図

***右上のFET2SJ334***

 フォトカプラでMOSFETを駆動することができたのであれば、Hブリッジは4つ分のFET駆動回路を組み合わせるだけです( 8?87)PMOSFETの駆動回路2回路分とNMOSFETの駆動回路2回路分でHブリッジができあがります。ちなみにステッピングモータの章で解説したのと同様、FETを利用したHブリッジの場合も、逆起電力をショートさせるダイオードが必要です。ただ多くのパワーMOSFETでは、パワーMOSFET自体に逆方向でのダイオードが内蔵されていますので、外付けは必要ありません。

 作例ではブレッドボードを使用していますので大きな電流を流すことができませんから、130モータを無負荷に近い状態で回転させています。また通電時間も極力短くするようにしましょう。また実際にこの回路を活用する場合には、後章の熱設計を参照して、放熱・許容電流量を計算してから使用する様にしてください。

 サンプルは、シリアルターミナルからの操作に応じてモータの回転方向とスピードをコントロールするプログラムです。「U(小文字でも可)を押すとCW方向に加速し、「D」を押すと、CCW方向に加速します。ターミナルにはその時点でのデューティー比が表示されます。

コラム8?16安全志向設計について

 本文の回路ではくどいようにプルアップ、プルダウンをしていますが、マイコンから常に理論的に正しい信号が送られているということであれば、プルアップ、プルダウンは必要ありません。しかしそのような仮定をするのは非常に危険です。

 FETの場合、ゲートをプルアップもプルダウンもしていない場合には、「たぶんオフになるがオンにならない保証は無い」のです。プログラムは人間が作るのものですから常に間違いが潜んでいる可能性があります。またマイコン側には通電せずに駆動回路側だけに通電するというケースもあり得ます。マイコンと駆動回路の接続を忘れていたり、何かの拍子に配線が外れてしまったりすることもあり得るでしょう。STM32はリセット直後はGPIOがアナログ入力になっていて、Hレベル、Lレベルどちらにもなりません。またプログラムの書き込み中はずっとアナログ入力状態になっているはずです。

 Hブリッジの場合、ハイサイドのFETとローサイドのFETの両方がオンになると回路がショートします。高電圧や高出力の電源(充電電池や安定化電源等)を使用していると、FETがすぐに焼けてしまい、発火の可能性があります。実験中に火災というのはよくある話です。かくいう筆者も何本かFETを焦がし、やけどをしかけました。趣味の工作であれば顧客に対する責任はありませんが、火事の責任は負わないといけません。

 パワー回路に限ったことではありませんが、設計の際には常に安全側にものを考える必要があります。Hブリッジであれば、駆動回路に電源をつないだだけでは、どのFETもオンにはならないという状態となるように設計しなければいけません。

コラム8?17 N-ch FETを使う理由

 バイポーラトランジスタでNPNトランジスタが使用されることが多いですが、FETでもN型が使用されることが多いです。FETはゲートの部分で電流を運ぶ誘導路(チャネル)が形成されることによりドレインとソースとの間で電流が流れることになります。ゲートに電圧を加えると、N型は自由電子が、P型は正孔(ホール)がゲートに集まってチャネルを形成します。正孔よりも自由電子の方が動きが素早いので、ゲートに電圧を加えたときには、N型の方が早くチャネルが形成されます。そのため半導体そのものの電子的な性質から、N型の方がP型よりも高性能なFETが作りやすいのです。市販されているFETの場合であれば、動作時間や価格に影響が出ます。同価格であればP型よりもN型の方が高速なことが多く、速度が同じであればP型よりもN型の方が安価です。また最大定格(電圧や電流)のレンジも、N型の方が広く、N型の方が高電圧・高電流に耐えるものが多いです。ただ最近は半導体の製造技術の進歩により、高性能且つ安価なPFETも出現してきており、差はだんだんと縮まって来ています。

 たとえば秋月電子で販売されている2SJ/2SK品番のパワーMOSFETの中堅品の場合、 8?242製品が似通った性能ですが、価格は1.5倍の開きがあります。また販売されている2SJ品番のP型で一番定格電流が大きいものは、2SJ554(60V/45A \300-)ですが、2SK品番のN型で一番定格電流が大きいものは2SK3162(60V75A \300-)です。同じ価格でも1.5倍程度の能力差がありますね。

8?24 入手しやすいパワーMOS-FET

 

SJ334

2SK2232

N/P

P-ch

N-ch

最大電圧

60V

60V

オン抵抗

0.029Ω

0.036Ω

最大電流

30A

5A

許容損失

45W

35W

ゲート駆動電圧

最大4V

最大4V

ゲートチャージ量

110nC

38nC

入力容量

3300pF

1000pF

オン遅延時間

20ns

20ns

上昇時間

25ns

30ns

オフ遅延時間

35ns

55ns

下降時間

130ns

120ns

価格

\150

\100

 後述の高性能なFETを多く発売しているIRFFETも似たような状況です( 8?25)P型のIRF4905N型のIRF1010(写真 8?38)では、IRF1010の方が一回り性能が優秀ですが、値段は二回り程安いです。同価格であるP型のIRF4905N型のIRL2505では、上昇時間を除けば、IRL2505の方が二回りほど高性能です。

8?25 IRFのパワーMOS-FET

 

IRF4905

IRF1010

IRL2505

N/P

P-ch

N-ch

N-ch

最大電圧

55V

55V

55V

オン抵抗

0.02Ω

0.011Ω

0.008Ω

最大電流

74A

85A

104A

最大許容損失

200W

180W

200W

ゲート駆動電圧

最大4V

最大4V

最大4V

ゲートチャージ量

180nC

120nC

130nC

入力容量

3400pF

3290pF

5000pF

オン遅延時間

18ns

13ns

12ns

上昇時間

99ns

76ns

160ns

オフ遅延時間

61ns

39ns

43ns

下降時間

96ns

48ns

84ns

価格

\192

\149

\

92

 このようにNFETPFETでは性能と価格に差があります。ただ劇的という程でもないため、状況に応じて使い分けることが必要になります。

写真 8?38 IRF1010

***P3041076***


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