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それでは早速ですがMOSFETを実際に駆動させてみましょう。ここではHブリッジの製作でも使用するN型MOSFETの2SK2232とP型の2SJ334を使用します。どちらも電子部品店の店頭で簡単に入手可能です。
まずはN型です。図 8?81の回路図のようにブレッドボード上で回路を組んでみます。
図 8?81 回路図
N型FETはゲートにプラスの電圧を掛けるとオンになり、マイナスの電圧を掛けるとオフになります。この回路ではスイッチ(ジャンパ)をプラスに接続すると、ドレインからソースに電流が流れるので、ドレイン側に接続しているLEDが点灯します。ゲートとマイナス側を接続している2.2kΩの抵抗はプルダウン抵抗です。スイッチを接続していない状態の時はFETを確実にオフにしたいので、マイナス側に接続しています。MOSFETのゲートはドレインやソースと絶縁されているため、抵抗を介したとしても、ゲートの電位をマイナスにすることができます。
N型FETをオンにする際にゲートに掛けるプラス電圧は何ボルトでもよいのかというとそういうわけではありません。N型FETをオンにする場合には、「ソースの電位に比して一定電圧以上となる電圧」をかける必要があり、この電圧をスレショールド電圧と呼んでいます。データシートではGvthといった名称で記載されることが多いです。スレショールド電圧はMOSFETの製品毎に異なり、2Vで駆動するものもあれば、6V以上必要なものもあります。2SK2232であれば4V以上と規定されていますので、図 8?81の回路図のように5VであればFETを確実にオンにすることができます。逆に確実にオフにするためには、「ゲートをソースと同じかそれ以下の電位」にする必要があります。
オンにしているときのゲート部分の電圧を測ってみると確かに5Vとなっており、抵抗とLEDの両端の電圧も5V近くになっています。FETでは電圧が降下しておらず、損失が少ないということがわかります。オフにしたときのゲートの電圧はプルダウン抵抗の効果で0Vとなっており、抵抗とLEDの両端の電圧は0Vになっています。
次はP型です。ブレッドボード上で図 8?82のような回路を組んでみます。
図 8?82 回路図
N型の時とは、ドレインとソースの上下関係と負荷の位置が逆になっていることに注意してください。丸ごと反対になっているので、負荷がソースに接続されているという点ではN型の時と同じです。
P型のオンオフのためにゲートに掛ける電圧は、N型の時とは逆に、オンにするときはマイナスに、オフにするときにはマイナスにします。N型の時はFETをオフにするためにプルダウン抵抗を付けていましたが、P型はオフにするためはゲートをプラスにする必要がありますから、プルアップ抵抗を付けています。ゲートをマイナス側にジャンパで接続すると、ドレインからソースに電流が流れますので、LEDが点灯します。
P型の場合のスレショールド電圧は、「ソースの電位に比して一定電圧以下の電圧」です。例えば2SJ334のスレショールド電圧は-4Vとなります。この回路で言えばソースの電位は5Vですから、5-4=1Vとなり1V以下の電圧を加えると、FETがオンになります。電源のマイナス側は0Vであり、1V以下ですから、FETをオンにできます。逆にP型FETを確実にオフにしたい場合には、ゲートの電位をソースの電位と同じにします。この回路で言えば5Vということになります。
コラム8?14エンハンスメント型とデプレッション型
FETにはエンハンスメント形(enhancement type)とデプレッション形(depletion type)型があります。本文中の説明はエンハンスメント型を前提にしています。エンハンスメント型は、ソースに対するゲートの電位が0Vのときにドレイン電流が流れなくなるものです(図 8?83)。デプレッション型はソースに対するゲートの電位が0Vのときにはドレイン電流が流れ、ゲートの電位をソースよりも一定以上低くしたときにドレイン電流が流れなくなるものです。 図 8?83 エンハンスメント型とデプレッション型オン電圧の違い
デプレッション型はコントロールのために負電源を用意する必要があるので、回路構成が複雑になります。パワーMOS-FETはエンハンスメント型のものが多いように思います。 |
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