3.2.5.3. ドライバIC

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マイコン徹底入門:周辺回路編:STM32のペリフェラルを活用: 3. タイマ: 3.2. FETを利用したHブリッジ: 3.2.5. ドライバICを利用したFETの駆動:

3.2.5.3. ドライバIC

 このようにディスクリート部品でプッシュプル回路を組むのは面倒な作業で、実装面積も大きくなってしまいます。そこで各社からプッシュプル回路を内蔵するICFETドライバという名称で発売されています。ここではMicrochipTC4428(写真 8?39/ 8?92)を使用します。FETドライバは店頭での入手が難しく、「店頭での入手可能な製品」で対応するという本書のポリシーには反してしまうのですが、ディスクリート部品で組み上げる手間を考え、ここは妥協することにします。店頭入手可能な部品で組みたい等方は 8?90の回路図を参考にしてトランジスタでのプッシュプル回路に挑戦してみてください。

写真 8?39 TC4428/TC4426

***P3041046***

8?91 TC4426/TC4427/TC4428のピン配列

***再トレース TC4428/TC4426データシート(Microchip)より***

 TC4428にはFETドライブ用のプッシュプル回路が2回路内蔵されています( 8?92)。最大1.5A(デューティー比2%以下且30μs以下) のゲート駆動電流を流すことが可能です。プッシュプル回路のうち1回路はインバータになっており、PFETの駆動に使用すれば、マイコン側はHレベル出力をオンとして扱うことができます。

8?92 TC4426/TC4427/TC4428の内部回路図

***再トレース TC4428/TC4426データシート(Microchip)より***

 ドライバICを利用した場合のHブリッジ回路は 8?93のようになります。

8?93 回路図

 このように非常にシンプルな形で回路を構成することができます。ドライバとFETの間の100Ωの抵抗は共振防止用の抵抗です。共振はコイル成分とコンデンサ成分をつなげたときに、コイルとコンデンサの間で、一定の周波数でエネルギーが移動しあう現象です。共振は一定の条件下ではどんどんエネルギー量が大きくなることがあり、影響を受けている部品が破壊されることがあります。

 PWM波形で駆動したいのに、ゲート部分で共振が発生すると誤動作してしまいますので、抵抗でこれを防止します。ただ抵抗値を大きいものを使ってしまうとゲート電流が少なくなってスイッチングが遅くなりますので、10Ωから100Ωぐらいのものを使用します。フェライトビーズ(写真 8?40)でも構いません(コラム18?2参照)。ちなみにこの入力抵抗はトランジスタによるプッシュプル回路の時も必要です。ドライバの入力部分にはプルダウン抵抗を付けています。

写真 8?40 フェライトビーズ 貫通型のもの FETのリードに通すだけなので簡単に使用できる

***P3040975***

 では実際にこの回路を駆動させてみましょう。駆動用のプログラムは先ほどのものと同じtim3_pwm_h_bridge_100hzです。先ほどと同じようにPWM周波数を変えながら出力電圧を計測してみました( 8?27)。この実験時の電源電圧は7.64Vです。

8?27 PWM周期と出力される電圧の関係

 

36000

3600

360

36

TIM_Prescaler

デューティー比

10Hz

100Hz

1KHz

10KHz

PWM周期

1%

0.077V

0.081V

0.136V

0.585V

 

2%

0.152V

0.158V

0.212V

0.707V

 

3%

0.219V

0.232V

0.287V

0.798V

 

4%

0.306V

0.308V

0.363V

0.880V

 

5%

0.382V

0.383V

0.438V

0.958V

 

6%

0.452V

0.458V

0.514V

1.034V

 

7%

0.535V

0.536V

0.590V

1.111V

 

8%

0.611V

0.610V

0.665V

1.186V

 

9%

0.688V

0.687V

0.741V

1.262V

 

10%

0.764V

0.761V

0.816V

1.338V

 

20%

1.529V

1.520V

1.573V

2.094V

 

 先ほどのフォトカプラだけの回路では1KHzでは理想的な電圧からはほど遠く、10KHzでは電圧変化が破綻していました。今回の結果であれば1KHzでも十分理想的な電圧と言えますし、10KHzでも実用可能な範囲内と言えるでしょう。

 ちなみにマイコン側から見るとFETをドライブする回路がフォトカプラでもFETドライバICでも制御方法に違いはありません。8.9.3.3.4.2のプログラムを使って実験してみてください。

 540クラスモータに負荷を掛けて使用する場合には、ブレッドボードでは許容電流量が足りず、対応できません。本書では後述のRTOSの項で、540クラスモータを実際に使用する際の回路図とサンプルプログラムを紹介しています。

コラム8?18 FETドライバ内蔵フォトカプラ

 本項の回路図は、厳密に言えば、FETドライバを駆動する部分にフォトカプラを使用してマイコンとモータを絶縁すべきです。しかし回路構成がかなり複雑になってしまうので、ここではフォトカプラを省略しました。

 ちなみにこういったときに便利なものとしてFETドライバを内蔵したフォトカプラが発売されています(東芝のTLP250TLP351AvagoHCPL-3120SharpPC925L0NSZ0F)。電源電圧が高いので本書で紹介するような小型モータの駆動には使いづらいですが、産業用途でよく利用するDC12/24Vクラスのモータの駆動には便利でしょう。


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