3 マイコン開発をするには

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どうしてマイコンなのか
さてどうしてマイコンを使うのかという説明だったんですが、今の話というのは、どうしてアナログ的な方法ではなくて、半導体メモリとCPUを使うのかということの理由です。
そうなると次に、CPUなら何でもいいのか、どうしてマイコンじゃないといけないのということが問題になります。皆さんがCPUといって思い浮かべるのは多分、パソコンに入っているやつだと思います。インテルのペンティアムとか、AMDのアスロンとか、IBMのパワーPCとかもありますね。これをつかって茶汲み人形を作ろうと思えばたぶん作れるんじゃないかと思います。でも私だったらそんなことはしないです。どうしてかというと、まずは高いんですよね。今、PCの部品もどんどん安くなってきてますけども、それでも何千円とかするわけです。その何千円もするということのメリットが何かというと、驚異的な計算速度なんですが、たとえばインテルのcore i3の1GHZ版だと1秒間に10億回計算処理ができるわけですけど、じゃあそれで茶汲み人形を作りやすくなるかっていうと、まあ関係ないですよね。畳1枚分を行ったり来たりする動作やそれにいくつか機能を付け加えても、そういうものすごい計算速能力を使い切るなんてとうていできないと思います。一方マイコンですが、STM32は、STマイクロエレクトロニクス社が生産している32ビットマイコンですけど、これはチップあたりで100円からだいたい1000円ぐらいです。値段はパソコンのCPUに比べると10分の1から100分の1ぐらいでしょうか。で、計算速度は24Mhzなので速度も100分の1ぐらいです。ただ、茶汲み人形を作るということであれば、これでも十分すぎる計算速度があります。私も茶汲み人形を作るとして、この計算能力を使い切れる自信は無いですよ。それぐらいのイメージな訳で、あえてパソコン用のCPUを使う理由は無いわけです。
で、じゃあパソコン用CPUが安かったら、たとえばジャンク屋さんで1000円で売っているボロパソコンからCPUだけ取り出せたら、そっちを使って作るかというと、やっぱり作りません。最初、マイコンは人間の頭脳で、五感や筋肉とつながるための仕組みを持っているという話をしたと思います。つまりマイコンだと、茶汲み人形をすぐに作れるわけですね、一方、パソコン用のCPUなんですが、これにセンサーだとか、モータを付けようとすると一苦労なんです。というのもCPU自体には、モーターやセンサーをくっつける機能を持っていないので、くっつけるための別の部品をさらに付けないといけないんです。つけるためにさらにつける。これ、めんどうくさいですよね。茶汲み人形のためにそこまでするかって話な訳です。部品を付け足すわけですから、費用・コストもどんどん上がっていきます。
そんなわけで、茶汲み人形を作るということであれば、パソコン用のCPUを使うメリットが無い一方で、デメリットはどんどん増えるです。で、パソコン用CPUとマイコンと、どっちを使いますかと聞かれたら、どっちを選ぶかというのは、自ずと明かというわけです。
開発環境を作る
さてここまでで、マイコンとは何なのか、どうしてマイコンを使うのかということをご説明してきました。では、お待ちかねですが、いよいよマイコンを実際に使ってみたいと思います。
まず、マイコンを使うための環境を用意する必要があります。
マイコンの現物をみてください。STM32 Value line discoveryはSTマイクロエレクトロニクス社のSTM32というマイコンを搭載している基板です。ブリスターパックから取り出して、よく眺めてみてください。基板をさわるときのお約束としては、必ず縁をもって、金属部分にはさわらないということですね。手の脂や汚れが付くと、そこからさびてきて、接点が抵抗になりますので。このボードは大丈夫ですけれども、FRPの繊維が残っているような基板は、ヤスリでこすってから持ってください。
青と黒のボタンのそばにある、平たい、黒い真四角の部品がマイコンです。部品の回りから、一つの辺あたり12本の足、ピンと呼んでますけれども、ピンが出ています。このマイコンはSTM32バリューラインというチップで、32ビットの高機能マイコンなのに、低価格という特徴のものです。このマイコンを使って開発を進めていくことになります。
どうするの?
さてそれではプログラムを作ってマイコンに実行させたい訳なんですが、さあやってくださいと言われても困りませんか。パソコンのプログラミングであれば、パソコンにはキーボードも付いているわけですし、画面も付いていますから、すぐにプログラミングを始められますよね。Visual Basicとかでプログラミングに入門した方が多いんじゃないかと思いますが、いわゆる統合開発環境が用意されていて、統合開発環境上のエディタにプログラムを入力する、ビルドボタンを押してビルドする、そうすると実行形式のファイルができるので、それを実行という手順ですね。この実行形式のファイルは、普通は、ハードディスク上のどこかに記録されていて、実行結果は画面で確認するというのがよくあるパターンだと思います。キーボード、ハードディスク、画面というのが使用する道具な訳です。
で、もう一度皆さんのお手もとの基板を見てください。キーボード、ハードディスク、画面、どれもありません。ボタンは付いてますけど、プログラミングできるような代物じゃあないですよね。極小サイズのハードディスクが内蔵されているなんてこともないです。
じゃあどうやって使うのかというと、プログラミング作業は、皆さんがお持ちの、普通のパソコンを使って行います。パソコンのキーボードと画面をつかってプログラミングをして、実行形式のファイルをいったんはパソコンのハードディスク上に作り出します。そしてそのファイルのデータを、このマイコンに転送して、マイコンに記憶させることで、プログラミングが完了するんです。マイコンにはハードディスクは付いていないんですが、この中にはフラッシュメモリが内蔵されています。SDカードとかUSBメモリと同じ、いわゆる半導体メモリです。フラッシュメモリなので、メモリに書き込むことができますし、書き直しすることもできます。マイコンの中のフラッシュメモリにプログラムを書き込んでおくと、マイコンに電源を入れたときには、マイコンはフラッシュメモリの中のプログラムを実行します。このフラッシュメモリに書き込まれているプログラムというのは、パソコンで作ったプログラムですから、結果として、パソコンで作ったプログラムが、マイコンで実行されたという形になるわけです。
開発ツールのインストール
さてここで開発に使用するファイル一式をパソコンにインストールしましょう。インストールには少し時間がかかるので、パソコンが作業をしている間に、インストールされるファイルがどういう働きをするのかをご説明したいと思います。
このインストール作業は、いわゆるインストーラを使うものではなくて、たんなるファイル・フォルダのコピーです。不要になった場合には、対象のフォルダを削除してもらえれば、アンインストール完了となります。レジストリを汚すこともありませんので、安心して下さい。
まずマイコン徹底入門のホームページから、最新版の開発環境のファイルをダウンロードしてください。左側のメニューの中のダウンロードというリンクからダウンロードページに行けます。皆さんの方では、適宜セミナー動画を停止させながら、作業を進めてください。
ダウンロードできたら、デスクトップなど、作業しやすい場所に展開してください。展開すると、miqnnetというフォルダができると思います。このmiqnnetのフォルダをコピーして、Cドライブのルートに貼り付けて下さい。パス名が、
C://miqnnet/
と続く形です。画面上はバックスラッシュになっていますが¥と読み替えてください。ルートに置くのは気持ち悪いという方もいらっしゃるかも知れませんが、ここはご容赦下さい。
貼り付けには、400Mバイト弱ありますので、長いと、コピーに5分ぐらいかかるのではないかと思います。で、貼り付けが完了しましたら、これでインストールは完了です。